双頭式扇風機、両面電話機…レトロ家電の魅力を収集家が語る

2013.2.3 07:00 1/5ページ)関西の議論

上段と下段の羽根で2方向に送風できる「双頭式扇風機」(増田健一さん提供)


 

「噴流式洗濯機」や「双頭式扇風機」、「両面ダイヤル式電話機」など、懐かしくて楽しい昭和30年代のレトロ家電に魅せられ、30年以上も収集を続けている人がいる。大阪府枚方市に住む増田健一さん(49)。「工夫を凝らした面白い製品がいっぱい。見ているだけでほっこりする」などと魅力を話す。(上岡由美)

 ■「三種の神器」が登場した活気ある時代

 洗濯槽の中で羽根を高速回転させ、水流を発生させて汚れを落とす「噴流式洗濯機」、風を起こす羽根が上下2段あり同時に2方向に送風できる「双頭式扇風機」、両面に電話のダイヤル部分を配置し、向かい合う2人が機材を動かさずに扱える「両面ダイヤル式電話機」…。いずれも昭和30年代に考案され、販売もされていた懐かしくて楽しい家電製品の数々だ

そんな昭和30年代の家電といえば、なんといってもテレビ、冷蔵庫、洗濯機。いわゆる家電でいう「三種の神器」だ。これらが本格的に登場し、まさに、日本の家電業界が“快進撃”を始めたのが、昭和30年代だったという。

 実は、増田さんが生まれたのは、昭和30年代も終わりにかかる38年だった。ものごころついたころには、40年代にかかっていたが、増田さんが30年代に興味を持ったのは、小学生の頃に見た38年発行の写真集「新しい日本・東京」がきっかけだったという。

 「(当時で)わずか10年ほど前なのに街並みも人々の様子も違う。日本が元気で活気にあふれた時代を見てワクワクしました」と増田さん。

 その関心がさらにふくらみ、55年に大阪市内で購入した「オキュパイドジャパン(占領下の日本)」と記されたデミタスカップが、記念すべきコレクションの第1号になったという。

■何でも作ってみようという発想が面白い

 コレクションの中には、テレビの形をしたラジオや、トーストとホットミルク、目玉焼きが一度に作れる調理器具など、ツッコミどころ満載の家電製品がずらり。

 テレビがまだ高級品だったころ、気分だけでもテレビを味わってもらおうと、デザインがテレビ、中身はラジオになったのが「テレビ型ラジオ」。同様に、3品を一挙に作る調理器具では、説明書で「まずミルクを入れ、2、3分たったらプレートに卵を落とし、最後にトースターにパンを入れる…」とあるが、これで本当に効果があるかどうか?

 当時のアイデア家電はまだまだあり、ごはんなどをたく電気釜の内鍋を4分割し、4つの料理が同時にできる製品もあった。説明書では、ごはんやおかゆ、ケーキなどを同時に作るといった夢のような方法が書かれてあり、本当にできるかどうかはともかく、そのチャレンジ精神には感心させられる。

 今から思えば、これらはみな冗談のようにもみえるが、当時は決して“しゃれ”でも何でもなく、企業が一生懸命作り上げた最新の製品だったという。

 「当時は、お客さんの要望があれば何でも作ってみようという時代。工夫を凝らした面白い製品がたくさんあり、見るとほっこりする。ときには失敗だったり、勇み足だったりする家電製品もメーカーの試行錯誤が感じられ、かわいいし、いとおしい」と、増田さんは語った。

 ■コレクション700点、引っ越し業者も驚く

 現在、増田さんのコレクションは家電製品だけで約700点。家電のパンフレットやポスター、生活雑貨などを含めると実に2千点を超える。

 これらの家電の収納のため、より広い家に引っ越したこともあったという。すさまじい収集への執念だが、驚いたのは引っ越し業者だったという。

 「洗濯機7台とか、テレビ8台とか、いっぱい家電製品があるじゃないですか。ちょっと申し訳なかったな」

 収集に対する意欲はなお衰えず、いまなお新しいレトロ家電の発見に力を注ぐ日々だ。

 そんな増田さんの現在のターゲットは、東芝の「電気鰹(かつお)節削り」(昭和36年)と早川電機工業(現・シャープ)の「自動洗米機」(昭和36年)だという。

 「ほしかった家電をきれいに磨き、眺めながら飲むビールは最高!」

 増田さんは朗らかに笑った。

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 ますだ・けんいち 昭和38年8月、大阪市生まれ。57年に国鉄(現・JR西日本)に入社。非番や休みの日に京阪神をはじめ、東京や名古屋の古道具店で昭和30年代の家電を収集。平成14年にJR西日本を退社したあとも、収集品の整理と研究は続けている。

 現在、大阪市北区の大阪くらしの今昔館((電)06・6242・1170)で増田さんのコレクションを紹介する企画展「昭和レトロ家電展」を開催中。2月15日まで。<引用 産経


WEB版産経ニュースを閲覧していたら、面白い写真が載っていたのでクリックしてみた。

 

「双頭式扇風機」最初は面白い新製品を出したなと思ったのだが、どうも昭和30年代以降に発明されたものらしい。

 

回転するプロペラ部分を高い位置にする商品などは出てくるが、最初から2方向へ送風できるのはすごい。

 

作っても売れなかっただろう。しかし、このアイディアは大切にしたい。ここに経済発展のためのものづくりの原点があるように思える。

 


 

このアイディアを発展させると、洋服架け用の長いツッパリ棒を床と天井に縦に設置し、クリップ固定式の小型扇風機を数台向きを変え設置することにたどり着く。冬場は天井にたまる暖気を下方へ流し、その暖気を水平方向へ送風することも可能だ。夏場は下方にたまる冷気を調整できる。

 

日本の住宅は高気密にしてエアコンで室内温度を調整しようとしているが効率が悪い。室内温度を均一にしようとすれば補助的な小道具が必要だ。

 


 

高気密住宅は、全ての部屋の温度湿度が同一であることが想定されている。しかし、全ての部屋をエアコンで調整しては莫大なエネルギーを消費する。使ってない部屋のエアコンは切るという節約思想が普通だ。すると、部屋ごとの温度、湿度のばらつきが発生する。湿気は使っていない部屋へ集中しカビを発生させる。

 

家が広く部屋数が多くなるほど、空気の流れが滞る。この滞りをなくす意味でも空調の小道具が必要になってくる。

 

家全体の暑さ寒さを一定に保てれば快適という発想は当然だが、それには莫大なエネルギーを消費するということだ。それが部屋単位の快適さを求めるために弊害が起きていることを無視している。このあたりをどのようにして解決するか。家電メーカーはそこまで考えていないに違いない。

 

一部屋でのエアコンの補助として突っ張り棒にクリップ式扇風機をつけることを書いたが、こういった小道具を廊下や通路などに設置し、温度差湿度差を圧縮平準化するということができれば、日本の高床式の通風の良い住宅に近づくに違いない。

 


 

日本人が健康で豊かな暮らしをするには、経済を発展させなければならないが、その基本は、夏は高温多湿で、冬は寒冷の地で衣食住をいかにするかが課題である。その基本を忘れたものづくりはやがて廃れる。

 

今、白物家電や弱電産業は厳しくなっているが、日本人の衣食住の原点に戻って考えれば生き延びる製品はできる。何もテレビやスマホだけが製品ではない。住宅メーカーとの融合でも役立つ製品は作れるに違いない。

 

湿度や温度センサーの組み合わせで屋内の環境を集中管理するシステムの市場は無限大である。売れそうなものだけを作っていては売れなくなる。日本人の衣食住で困っていることの改善という目的が製品開発のコンセプトとしてなければならないに違いない。

 

「双頭式扇風機」一見、送風用プロペラが2個あるだけじゃないかと思われるだろうが、一部屋レベルではあるが日本の住環境にマッチしている。こういった発想を大事にすれば、一部屋から家全体の環境改善へと発展し、最終的な社会インフラへと結びつき発展するのではないのかと怪しんでいる。