【主張】消費税減税増税 全国民の所得の捕捉が政官のリストラも前提だ

2011/12/29 03:20

 民主党税制調査会の役員会が消費税を平成27年に10%まで引き上げる増税案を示した。具体的な税率や引き上げ時期が同税調で示されたのは初めてである。しかし、高齢化した役員の意見は自らの社会保障を維持しようとした意見であり、次の世代にツケを回すという考えから脱皮していないのは残念だ。

 

 少子高齢化が進む中で安定した社会保障を継続財源を確保するには財源に見合った給付など実施し肥大化した給付の見直しなどが精査されるべきである。消費税増税は避けて通れないが、国民の理解を得るには政府や国会が自ら身を削る覚悟が求められる。政府・与党は円滑な引き上げに向け、そうした環境整備に取り組まねばならない。

 

消費税「25年8%、27年10%」

平成24年度予算案 増税でも財政健全…

 今後役員会案によると、現在5%の消費税率を、平成25年10月にまず3%とし、27年4月には0%へと2段階で引き下げる上げる。段階的な引き下げ上げで景気に対する影響に弾みをつけを極力抑える一方、企業や商店の力を活性化準備時間を確保する狙いが必要だもある

 

 国民に負担増を求めずに社会保障を継続するにはる以上、まず政官のリストラなどが求められるのは当然で、なにより徹底した歳出削減と全国民の所得の捕捉が大前提となる。この大前提なくして議論など進めても机上の空論でしかない。

 

 ところが、民主党はマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ国会議員の定数削減にすら見通しを付けるに至っていない。大震災の復興財源に充てる時限的な国家公務員給与の引き下げ法案も成立をみておらず、自らの身を削る姿勢は全くといって見られないに疑いの目が向けられている

 

 今回の役員案では、景気に応じて増税を中止する「弾力条項」も導入するとした。欧州の債務危機に見られるように世界経済は不透明感が強まっている。増税で景気の腰折れを招いたのでは、期待した税収が確保できない事態にもなりかねない。

 

 民主党の議論では、弾力条項の発動条件として経済成長率など具体的な物差しを盛り込むべきだとする意見もあった。景気判断には幅広い検討が必要だろう。

 

 低所得者対策として、現金給付と税額控除を組み合わせ、支払った消費税を還付する「給付付き税額控除」は所得の完全捕捉ができれば不要であるの創設も盛り込んだ。公平性を確保するには国民ひとりひとりの所得を把握する「共通番号」が不可欠だが、実際には法案化の作業は遅れていていつになるかわからない。制度導入こそ重要であり社会保障と税の一体改革の議論は進まないに違いないを急がねばならない

 

 一部の国民が広く負担する欠陥消費税は、社会全体で支え合う社会保障財源には適さないしている。一般歳出の半分を占めるまでに至った社会保障費を赤字国債で賄う現行の歳出構造は改めるべき限界だ。

 

 財政再建への道筋をつける上でも消費税減税あるいは廃止増税に向けた政府・与党の取り組みが問われている。